個展の会場の古本遊戯流浪堂さんから徒歩7分くらいのところに、碑文谷公園という、池があってボートが浮かんでいて、まんなかに神社のある公園があります。
晴れた昼下がり、店主の二見さんに教えていただいて、パンを買って、てくてく線路沿いに歩いていってみました。
公園に入らずとも、響き渡る子どもたちの声で、とても賑わっているのがわかります。
初めに行った日は平日だったので、無事に木のそばのベンチに池の方をむいて腰かけて、ときどき鳩に眺められながら、パンを2つ食べました。

ところでわたしは一人でパンやさんに行くと、平均的に2つパンを買っています。小さいパンと大きいパンとで、ひとつのパンでもおおいに違いがありますが、その大小にかかわらず、たいてい2つ買っています。あれほどたくさんのぴかぴか光るパンたちとよい香りに包まれてひとつに絞るのは至難の業ですし、かといってあれもこれも食べられるはずもないので、2つです。
お会計を待つ列に並んで、ほかの人はいくつなんだろうとお会計を待つトレーを見て、たくさん買っている人がいると、なぜだかわからないのですが嬉しくなります。その人はたぶん数人分のパンか、明日の朝の分のパンも買っているので、一人分のお昼に買っているわたしとは事情が違うのでしょうが、ともかく、嬉しくなるのです。あれもこれも食べたいけれどようやっと2つ選んだじぶんからすると、あれもこれも食べたいからあれもこれも選んだような、もうひとつの架空の選択がそのトレーのうえに具現化しているように思えるためかもしれません。

さて遅めのお昼にパンを2ついとも簡単に食べたわたしは、池のまわりを一周してから流浪堂へ戻ることにしました。

そして今度は、来たときとは反対に線路の東側を歩いて帰ろうと思いました。そしていつものことながら、少々うろちょろしていました。うろちょろの途中で、目の前にあじさいがもこもこ、あっちにもこっちにも咲いているお家があって、まだ5月で梅雨入り前でしたが、それはそれはたくさん咲いています。わたしはあじさいが大好きで、毎年梅雨の時期になると、あじさいを見つけるたび立ちどまってじーっと眺めるのが常なので(犬にとっての電信柱のようなもの)、もちろんそのときも立ちどまって、眺めていました。そうしたら、あじさいのかげから眼鏡をかけたふんわりとしたおじいさんが花きりばさみを片手にあらわれて、「いくらでも、好きなだけ、持って行ってください」とおっしゃいます。見れば道のそばに水色のバケツが置いてあって、あじさいの枝が2本入っていて、「ご自由にお持ちください」と書いてあります。「どうぞ、お好きなだけ」といって、おじいさんがはさみを貸してくださいます。梅雨の一足先にこれだけみずみずしく咲いているあじさいを切っていいものかと思いつつも、せっかくあじさいの主がそうおっしゃってくださっているのだし、そしてなによりあじさいが好きなあまり、わたしは一瞬にしてあじさいをいただくことを決定していました。「色は4色くらいありますからね。これなんかいいんじゃないですか?」とおじいさんがおっしゃって、わたしは「本当だ、これきれいですね」、チョキン。「本当に切っちゃっていいんですか?」「好きなだけどうぞどうぞ。これも丸くていいと思いますよ」、「じゃあこの色も」、チョキン。というわけで、4回切りました。おじいさんはわたしのことをきっと近所に住んでいる散歩途中の人物、と思われているようで、「別の日でも、いつでもまたどうぞ」とにっこり。切りたてのあじさいは、たいへんボリュームがあって、しかも枝ものなので、水がたくさん必要です。持ち帰り方について、何も考えていなかった。わたしは、パンやのビニール袋にホースで水を注いでいただき、たぷんたぷんになったそれにあじさいを入れ、おじいさんにやさしく見送られて、駅前の商店街をたぷんたぷんさせながらゆっくり歩いて流浪堂に帰りました。

個展ではパレットや筆も飾っていたのですが、筆を立てていたガラス瓶と空のペットボトルに、二見さんに水を入れてもらって、あじさいたちは無事に落ち着き、会場をやさしく彩ってくれました。

とってもうれしい出来事でした。

 

これは会場に入ってすぐ左手の棚の上。

きのこの絵は、額装やさんにちょうど良いちいさな額をつくってもらいました。イタリア製のフレームなんだそうです。
そのとなりは、フィンランドの飴Marianneを特に意味はないのですがガラスのドームのなかに入れてみました。しましまの包み紙のこの飴は、あと何個か、いろんなところに置いていました。ガラスのドームは、松本に行った際にわたしの大好きな“陶片木(とうへんぼく)”というお店で買いました。(うちでは、今のところ、ウニにかぶさっていることが多いです。)
左の箱は、”futo futo paper” を使った貼り箱。”futo futo paper”を見て、ピン!ときて、アイデアあふれるお友達が作ってくれました。


Written by mariko