手紙をポストに投函する瞬間とか、あたらしい手帳の一ページ目になにか書き込む瞬間とか、不可逆性を前にすると音のない緊張が漂います。そういうときはだいたい、心のなかかあるいは口に出して「えい!」と言って、手紙から手を離し、予定の一文字目を書き始める。カレンダーを切りとる時も同じように。

勢いをつけたわりに、手帳に書いた初めの文字をいきなり間違えたりする。一分前の、ペン先が宙に浮いていたときのじぶんに「まあそんなにかしこまることもないよ(それよりも漢字の確認をしといたほうがいいよ。横線は何本?)」って声をかける。

割合しょっちゅうじぶんに声をかける。「えい!」の先が、うまくいくときもあれば、そうでもないときもあり、穴に入って3日くらい出たくはないときもあるけれど、いずれにしても、ひとりではないんだと思います。(作者)


おむすびクラブ 2017年7月号 / ASA仙川 発行


Written by mariko