浮いてる浮いてない

 

桜島が、陸とつながっていることを知ったのはついこの頃のことである。

陸といっても、そのつながっているところの九州も島だし、日本も島のあつまりだし、・・・ユーラシア大陸は、どうなのか。たいそう大きめの島なのか。だったら陸ってなんなのか。海から出ているところの、空気が吸えたり、歩けたり、登れたりする部分は、ぜんぶ島であり全部陸なのか。

ただ、船に乗ったり高いところから海を眺めて、「あ、島だ」と言いたいときはたしかにある。「あ、小さめの陸だ」とは言おうとも思わない。

島ってなんなのか。

島は海に浮かんでいるような気がする。

だけど、海底から高く高くそびえる山の先っぽの、海から出ている部分のことだったら、別に 浮かんではいない。島っていうより山である。

そもそも、島が海に浮かんでいるっていうこの漠然とした思い込みはなんなのだろう、と考えて、ひょっこりひょうたん島のことが思い浮かんだ。

波をちゃぷちゃぷちゃぷちゃぷかきわけて、雲をすいすいすいすい追い抜いて、僕らを乗せて進むひょうたん島のこと。いつでもいとも簡単に頭のなかで流れはじめるこの歌のこと。

どうやらわたしは、この地球上の島とひょうたん島とをあまねくイコールだと思っていたようなのであります、知らず知らずのうちに。島っていうのは、海に浮かんでいて、海を進むもの。小さいころからわりとよく眺めていた島のことを母が、「形がひょうたんに似ているから、ひょうたん島って呼んでいたのよ」と言っていたことも手伝って、その島が、眼前の島でありながら物語のなかのひょうたん島の存在を半分担って信じる保証ともなっていたのだろうと思います。それに「あれはひょうたん島だな」ってつぶやいてしまう風貌の島って、わりと見かけます。

しかもそのうえで、たとえば瀬戸内海を船に乗って進んでいるとき、まわりの島々があっちへこっちへ進んでいないことに対してはいっこうに不思議を感じないのです。なんとなく、じぶんが見ていないときにちょっと動いたりしているんだろう、とは思っているけれど、ちょうど目をやった先に、島が波をかきわけ雲を追い抜いてどこかへ向かって進んでいるさなかというのは見たことがありませんし、聞いたこともありません。

思い込みと現状との違いに、わたしはここまで一切なにも疑問をさしはさまずに生きてきたというわけです。

これはほんのひとつの例にすぎないのでしょう。

 

しま【島・嶋】
①周囲が水によって囲まれた小陸地。成因上から火山島・珊瑚島・陸島などに分類。
(広辞苑 第五版より)

 

桜島が大隅半島とつながったのは1914年の大噴火のときのことだそうです。