みなさんは、一日のあいだに何回くらい、「どうしても眠い」っていう時がありますか。

「どうしてもっていう程ではないけど、冴えているか眠たいかでいえば、眠い」、「起きて2時間しか経っておらず、そのうち5分は歯磨き、2分はゴミ捨てに行って帰ってきただけ、15分食事をしただけなのにも関わらずもう眠い」、「起きていて概ね眠いなあと思っていたんだけれどいよいよもう眠るしかなさそうだ(15分前からyoutubeで歌を聴いているだけなんだもの)」というように、「眠い時」の状況に関してはバリエーションの海が広々深々と横たわっております。わたしはその茫洋とした中を、「眠い眠い」と思ったり言ったりしながら泳いでいるにすぎません。

いつになったら目が覚めるんだろうと思いながら眠いままに一日が終わる日など、冬眠をする熊のことを想像して、自己正当化を図るしまつです。

こんなに寒くて薄暗いんだから、冬眠しても良いくらいだと身体は言っているわけで、それなのにわたしは今日も一日冬眠を開始せずに活動したっていうわけだね(それはすごい!)、、、とかなんとか。

そんなことを言うなら一日熊になって生活してみたまえ。

冬眠を前に、熊がどれほど準備をするのか考えたことありますか(ありませんとも)、春になり冬眠から覚めた熊の気分を想像したことがありますか(ありませんとも)、寝床は解けた雪が入り込んで水浸し、ゼロから食べ物を探さなくっちゃならないんだし、ずっとあちら側の世界に行っていたせいで、この世界の地図(鮭の泳いでくるあの場所)や大切な約束のことをどうしても思い出せなくなってしまっているかもしれないんだし、体内目覚ましがすっかり熟睡してうっかりして数年寝っぱなしっていうこともあるかもしれないんですよ(そんなことあるんでしょうかねえ)。

それからみなさんは、うたたねをすることがありますか。

わたしは年に2回くらいうたたねをすると思います。それは決まって電車の中です。揺れ+暖かさ=うたたね。加えて一瞬二度寝をしたせいで電車は降りるべき駅を爽やかに通過し、次の駅で降りて今さらすっかり目は覚め、反対のホーム(このような場合においては決まって反対のホームは遠いのです)へ急ぐも戻りの電車を乗り過ごし、次の電車を待つあいだの10分ですっかり身体が冷えて現実に戻っていくときの気分。

年2回が多いか少ないかはよくわかりませんが、わたしの場合、例えばテレビを見ていたり、何か書いたり読んだりしていて、そのいつの間にかすっかり眠ってしまっている、っていうことは、ほとんど無いと思います。

間近のテレビが大きな声であれこれ話しかけてきていて、じぶんがいる場所がとくに柔らかくもない床の上で、当然毛布も何もかぶっていなくても眠りにつけるタイプの人もいますよね。それで起きてからも格段背中や腰が痛いっていうわけでもなさそうです。なんてすばらしい適応力。

残念ながらわたしはいつもの布団とシーツといつもの毛布とまくらと湯たんぽがないと眠りのドアの向こうにゆけません。それが揃っていたって眠れないときもあります。この前はいつもの毛布の、顔に当たってくるやり方がどうしても気に入らず、むずむずするのですが、毛布を肩のあたりまで下げたら下げたで心細いし、顎のところまで持ってきたらむずむずするしで、その繰り返しでぜんぜん眠れずに、そのじぶんに匙を投げそうでありました。こんな調子では冬眠するにしたって厄介そうです。雷が鳴ったらすぐに冬眠から覚めてしまうかも。

アーカイヴくんの言っている「寝ているって思ったでしょ、考えているんだよ」っていうのは、先日、どこからどう見てもいま寝ていたしこれからも寝るであろう人物がほんの一瞬なぜかわたしの視線に気がついて目を覚まし、発した言葉をもとにしています。そしてその後1分以内に再びあちらの世界に漕ぎ出して行ったことは言うまでもありません。でもそれを聞いて以来、わたしはすこし気が楽になりました。

どうしても眠いとき、椅子に座っていても半分こっちの世界にいないようなとき、珈琲なんて太刀打ちできないくらい、それはそれは硬い眠さの壁がわたしを淵に押し出そうとするとき、こっちの世界のわたしはわたしにつぶやきます。「眠そうに見えるでしょ、考えているところなんだよ」

そう思ったら、それはそうかも、って少し思えるのが実に不思議です。こっちの世界にしっかりと足をつけて頭を冴えわたらせているとき(じぶん比)じゃなきゃ、考えてるって言えないわけじゃない。もはやこっちのじぶんの制御はちっともつかないけれど、あっちの海の中を漂うわたしは、ひょっとしたらなにかおもしろい海藻を引っこ抜いてくるかも。頭の上にレモン色のイソギンチャクを載せて海から上がってくるかも。ゆえに、これはこれで良いのです。っていう具合。

 

もちろんどうしてもどうしても眠くて、眠れるときは、寝ますとも。人間だもの。



Written by mariko