ピンクに浸かっていたときのこと

ピンクに浸かっていたときのこと
それはずっと容易だった。
おそらくあなたがおもっているよりもずっと。

わたしはずっとピンクに浸かっていた。
とこまでも、さまざまな色合いのピンクが、打ち寄せたりさざ波を立てたり湧き出たり留まったりしていた。
なにかを思い出すのだがそれがなんなのか思いだせない。
黄色い太陽のようなひかりがじつにおぼろげに、
幾層にもなる雲や空気のガーゼに包まれた赤ん坊のように浮かんでいる。
まぶしくもなんともなく、ピンクの水面に黄色みがさす。
おそらくはわたしのまぶたやほおにも。

トンボが星座を結ぶように水面を渡ってゆく。
このまま眠ってしまえばじぶんがなくなるとしても、
わたしはぜんぜんかまわないのだった。

起きれば生まれてしまうのだとしても
それはそれで、渡ってゆくしかないのだった。
何色かの水面を。