2013-07-12

 テレビを観るともなくつけていたら、その30分くらいのあいだ、テレビのなかの大人たちは、おおむね「暑い」と言い続けていた。日本全国の暑い場所ランキングが発表され、そのうち一番暑いところに住んでいる女性が、「できればここに住みたくない」と言っていた。ただでさえ、どこもかしこも暑くて参ってしまうのに、あえて「日本で一番暑い」称号を、おそらく毎年毎年与えられ続けていたら、そこに住んでいることへの意見を求められて、エスケープ願望を述べたくもなるだろう。それにたいして、大変涼しく過ごしやすい場所の紹介というものは、ない。避暑地という言葉があるので、そういう場所は実際にあり、避暑をしに行く人たちも一定数いるに違いないのだが、そういう人たちにインタビューをしているのは観たことがない。「やっぱり、ここは涼しいですよ。昔に比べたら少し暑くなってきた気もしますけれど、木立の間を散歩するとほんとうに気持ちがよくって、いいアイデアも浮かびそうなものです。これから少し離れたお店へパンを買いに行くところです。午後の焼きたてを買うのですよ。もちろん、そこへは車で行きます」とかなんとか。そしたら「あんたはいいよな」という具合に、麦茶片手にテレビのなかのその人をにらみつける人たちが続出するのであろうか。そしてテレビ局に「どういうつもりだ」と苦情の電話が深夜まで鳴り響いたりするのだろうか。空想であるが、さきほどのような避暑おじさんが、わたしは素直にうらやましい。なにせ、やっぱりこう暑いといろいろ大変だもの。

現在の地球は、2013年である。「発展」ということがどういうことなのかはよくわからないけれど、部屋を冷やしたり暖めたりすることは、比較的容易になってきているんじゃないか。人間が洞窟に暮らしていたころは、そもそも玄関の扉のようなものはなかったのかあったのか知らないが、わたしたちは玄関に鍵をかけ、部屋のドアを閉めて、エアコンをつけることができる。冷たいシャワーを浴びてすっきりすることもできるし、場合によっては冷蔵庫が自動的に氷を作ってくれるし、脱ぎ捨てた服や下着や靴下は、洗濯機の中でこれまた自動的に洗われすすがれ脱水され、場合によっては乾かしてくれる。濡れた髪の毛を乾かす機械もある。濡れた食器を乾かす機械も売っている。まつげをカールさせる機械も、体をマッサージしてくれる機械も売っている。そういう世界に住んでいる。けれども、窓を開ければ灼熱で、エアコンのない部屋は寝苦しく、エアコンを効かせすぎるとこれまた具合が悪くなる。ただでさえ一年中満員の通勤電車は、暑かろうとも満員で、ますます暑い。「クールビズ実施中」の張り紙が、「スーツを着ていませんしネクタイもしていませんが、これは節電のためであって、マナー違反とかそういうわけではありません」と言っている。暑いの大歓迎の人をのぞいては、暑くても、さも暑くないようにじぶんに呪文をかけて日々を過ごす魔法使いになれるかどうか。わたしの魔法は毎年大してかからない。だから、夏の記憶はいつだってぼんやりもやがかかっている。食欲も失せ、カブトムシのようにじゅくじゅく水分のある果物をかじっていたくなる。

弱いとか強いとかいうのは常に相対的なのだけれど、そういう意味ではわたしは肌があまり強くない。相対性を抜かすと、わたしの肌にはわたしの肌的特性があるということにすぎないのだけれど、夏の汗はなかなか皮膚に堪える。小さいころは肌がかゆくて眠れないことがよくあったが、いまも夏場や季節の変わり目はそうである。かゆいものはかゆいのであって、今も昔も「かかないほうがいいよ」とやさしく言われるが、かゆいのを我慢するのは至難の業だと思う。頭の中が「かゆい」の三文字に占められて、それだけになる。そして最近あせもができた。梅雨明けすぐである。わたしの身体はなかなか敏感に季節(気温、室温、湿度)を感じ取っているようだ(意外に)。ううむ。

そこでわたしはあせもにたいして、なにか工夫できることはないかと、現代人らしくインターネットで検索をした。単に「あせも 原因 対策」と入れるだけで、あとはよくわからないがコンピュータがインターネットの渦のなかにもぐって「それっぽいもの」を探し出してくれるんである。王様でもないのに、なぜわたしがこんな機械を持っているのか不思議だ。しかも手のひらサイズである。

コンピュータが拾ってきてくれたページのうち、ある皮膚科の文章を読んでみたところ、以下のようなことが書いてあった。

・あせもを防ぐ、またはそれ以上悪化させないためには、汗をかかないことが肝要です

・したがって、なるべく涼しい快適な環境で過ごすようにしましょう

なるほど。

100%「なるほど」としか言いようがなく、涼しく快適な部屋を持ち歩けず避暑に行く具体的予定もない身としては、今年もあれこれ工夫をしながらやっていこうと決意した。

特別持ち歩きたいというわけでもないのだが電話を持ち歩き、印刷屋さんに行かなくても自分の家で印刷が出来、体重計は体脂肪率やら色々親切に教えてくれる2013年。暑いものは暑いし、Tシャツのタグは相変わらずチクチクするし、涼しく快適な部屋を持ち歩くことはできない。桃は今年もおいしいし、小さな子どもが浴衣を着ているのはかわいいし、洗濯物はよく乾く。あせもさん、こんにちは。


Written by mariko