ぜんぶ

2013-04-05

 

アン・ハサウェイが雑誌のアンケートで、「好きな音楽は?」という質問に「全部」というような答え方をしていた。そういう答え方は新鮮だった。

音楽っていうものが好き、ということ。

知っているのも知らないのも、これから知るものも、死ぬまで知らないものも果てしなく無限にあるなかで、「全部」と言うことの、気持ちのよさ。

“全部”というのは概念でしかなく、この世のあらゆることを把握している人物は、たぶんいない。

“ぜんぶ”には、未知のものの存在へのたしかで柔らかな予感が含まれている。

何か一つか二つかのことについて、猛烈に深く詳しく突っ込んで熱狂的に知らなきゃならないっていうのは、そういう志向の人もいるというだけで、誰もがみんな「○○が好き」っていうわけではない。ある人が音楽についてはとても厳密な好みがあったとしても、別の部分においてもそうとは限らない。「好きな魚は何ですか?」と聞かれて、「何でも好きだけど、どっちかっていうと白身魚のほうが好きかな」というくらいの塩梅。

「全部好き」と言う、大らかな楽天性がわたしは好きだ。

世界に向かって穴が開いている。