「さようなら、頭でっかち」という言葉がしょっちゅう頭に浮かびます。
どうも、頭が頭にさようならと言う矛盾をはらんでも、わたしがわたしにそう言いたいようです。
毎日は選択の連続。そしてわたしはいちいち反応する。
「冷たい水」とか「なんて細い茎だろう」とか「頭が痛い」とか「いまの挨拶、声がかすれちゃたな」とか。
毎日は繰り返しの連続。だいたいが、隣の人がドアを閉める音とそれから出かけていく足音で目が覚める。
どんな人が住んでいるのかはちっともしらない。
目をつむっていると、魚みたいに、色とりどりの花たちが水のなかを泳いでいる。
バイオレットと目の覚めるような黄色のパンジーたち、球根をくっつけたままのムスカリやスイセン、
小さな声でしか話さない薄い珊瑚色のラナンキュラス、パンに挟んで食べられそうなネモフィラ。
目をひらくと、エメラルドグリーンのカーテンのすきまの向こうに夜がまだ立っている。
植えられて発芽して伸びて切られて運ばれて飾られて枯れて。
いつもはさみは忘れずに。