今日もどこかでアーカイヴくん 49

 


季節はすっかり梅雨だといいますのに、すっかり更新が滞っておりましたアーカイヴくん(49話)は、1月のお話です。かまくらに入っちゃってます。

靴下の片方がどこかへ行ってしまうというのは、古今東西比較的よくある話なのじゃないかなと思っていますが、おそらくこの先も100年くらいはそのまま、よくある話のままなのじゃないでしょうか。

「ドラえもんの道具で何がほしい?」と訊かれたら、 “どこでもドア” と “スモールライト” で迷います(ひとつに絞らなければならない場合)。

どこでもドアにかんしては、あっという間に行きたい先に行けるわけですから、時計とにらめっこしながら駅に向かって走る必要もなく、10時間飛行機に乗るために2時間かけて空港に行き、乗るまでに2時間、免税店をぶらぶらしたりたこ焼きを食べながら待ったりする必要もなく、まったく怠け者の発想で恐縮ですが、富士山のてっぺんにサッと行って日の出も見られるでしょう(酸素に関しては別途検討が必要)。

いっぽう、スモールライトがあれば、ありとあらゆる持ち運ばねばならぬものやひとまず保管しておかねばならぬもの(アルバム、いつか描くであろう大きなキャンバス、冬物の布団など)の数々が、ピカーッと光を照射することにより小さくなります。easily 省スペース化。それでわたしはたいていの場合、これもいるかもあれもいるかもと呪文のように唱えて、スケッチブックや手帳や色鉛筆や本やビニール袋や日傘などなどをかばんに入れて出かけるものの、きちんと数値を割り出したことこそありませんが、実際に出先でそれを使っている割合って20%くらいなんじゃないかと思います。電車の中で読もうと持ってきた重い本があるのに、スマートフォンを熟読していることに気づくことの多さ!あるいは、日傘は電車に乗ってしまえばさす必要がないので端的にかさばりますし、雨が降るかどうかわからないどんより空の一日における、”あとで使うかもしれない傘” の存在感たるや、相当のものです。かといってどこかに忘れてきては意味がないから、それなりに注意を払ってひたすら腕にぶら下げ続けることとなります。膝に当たります。

そういう諸々さんたちを、「スモールライトー!」と言ってまとめて光を当てて小さくしてしまい、チロルチョコのようにして、小さなかばん、もしくはポケットに入れてお出かけができることを考えると、わくわくします。・・・ここまできて、スモールライトを使うのであれば、対となるビッグライトも必要なことに気がつきました。ひとつしか道具を選べない場合、スモールライト機能とビッグライト機能が一緒になっているものがあれば、多少値段は張っても仕方ありません。ひとつですもんね。いくら小さくしても、いざ使うときはビッグライトを当てて元のサイズに戻さなくちゃいけないですもんね。その時は叫んだりといったパフォーマンスは避け、駅のひさしの下や喫茶店のテーブルの陰などで、こそこそ大きくしたいと思います。

それでどうしてスモールライトの話かと言うと、傘っていつまでたってもかさばっています。雨が降った途端にもう本当になくてはならないありがたみを放つ傘ですが、雨が降っていないときや、屋内に戻ったさいのかさばりぶりには目を見張るものがあります(わたしだけでしょうか)。雨の中、あんなにお世話になったのに、電車に乗っていざその置き場に困るやいなや、水はぽたぽた落ちるし、突然親しみが失われてゆくのです。なんて傲慢なわたし。

ですがそろそろ、傘も小さくなったり大きくなったりしてくれても良いような気もします。スマートフォンのなかに、目覚ましや辞書やカメラやレシピが入っていることを考えると、傘も少しくらい持ち運びしやすくなってくれても良いように思います。それで、靴下も、なるべく片方が行方不明にならないでいられるようになってほしいと思います。「ア、右くんどこいっちゃったの!?」って気づいたら左くんがみずからソファーの下から出て、洗濯機のそばへ向かっていってほしい。ぱっと見た感じは同じ黒の靴下でも履くと違うことがあります。どちらも右どうしでペアになっていることがあります。その際も、自己申告をしてほしいです。「アノ、すみません、僕と彼は別々のペアでして、僕のペアは今洗濯機の横の隙間にいて出られないので、引っ張り上げてもらえますか」というように。

と、いろいろ贅沢なことを考えます。だけれど、じぶんの身体が瞬間的に伸び縮みしないように、髪の毛が伸びるのにも時間がかかるように、傘も小さくならないし、靴下もあっちへ行ったりひょっこり出てきたりするんだろうと思います。何年かはわからないけれど、もうしばらくは。