わにが言うには、これからきのこ狩りに行くそうだ。

わにが言うには、わにのくせしてきのこを食べるなんてなんていう格好悪いふるまいだろう、って、生まれた集落ではこそこそ言われていたそうだ。それはもちろん耳に届いていたから、こそこそ効果はなかったのだけれど。

それで考えたすえ、そんなこそこそに耳を傾けることは、ちっとも必要ないってある日彗星が落ちてきたみたいに思ったのだそうだ。それになんとなくだけれど、きのこに関心のあるわには、じぶんのほかにもどこかに、黙っているだけで、いるんだもの、とも思ったから、きのこを見つけて、「きれいな色だ」と言うときに、それはひとりごとではなかったのだ。どこかの川辺や森のそばやあるいは草原で、背の高い植物と一緒に風に揺れてるべつのわにに届くと思って言っているんだから。

きのこ狩りの景気づけに、宙返りをしてくれないかとわにが言うので、わたしは自転車ごとくるっとまわって、もとの地面にかえってきた。宙にいたあいだ、空を白い鳥が横ぎってゆくのを見送った。

わには拍手した。とてもよい拍手だった。その拍手はそのひ一日、花にとまったちょうちょが羽を閉じたり開いたりするように、わたしのなかで響いてきたのだった。

きみの宙返りってほんとうにすばらしい。籠やバッグのなかの郵便たちも拍手してるだろう。

その日はわににとってはきのこ狩りの日、わたしは耳のおくでときどき拍手を聴きながら、小さな家や五階建てのビルのドアごとや、湖の入口のポストに、郵便を届けてまわった。

 


Written by mariko